とりつかれた夜は救いようのないほど長すぎる
朝を確かに迎えてみたくて 重い瞼をこすりひとり言並べた





やがて閉じ始める世界に吸い込まれることができるなら
こんな不安をせずに済んだかもしれない 思い出しかけの思い出が弛緩をしばらく鈍らせる





切られたシャッターに呼び起こされる 戻れない時を重ねながら積み重ねるセツナ
解き放たれぬように必死に塞ぎ続ける 遅れてばかりだ何をするにも





キザで生意気だったあの頃 未来なんて過去と変わらない
投げ出したフリでこなしていた日々 断たれた絆は紛れもなく自分自身の言動の蓄積
巻き戻しのきかない回路 再生を繰り返す情景 迷いをすべて振り払えたらいいのに





叶わない願望を口走り 沈む太陽と人の群れを眺めた歩道橋の中央で
永遠が欲しかった 一瞬さえ抱きしめることができなかったあの頃
唯一のものが欲しかった 成功への過程さえ溢れすぎていた時代
時間が欲しかった あがき疲れてからとことん究めてみたかったあの頃
術が欲しかった 器用に通り擦れ違う彼女を越えるような 
街角で偶然出会った彼を惹きとめておけるような





何かが足りないと何かを求めていた はっきりしないまま流され迷いつづけ
芯に深く据えるような羅針盤を手に入れられるまでずっとこんな気分はつづく





高く遠くへ羽ばたくために我慢しなければならないことは多く
高ぶる鼓動と人見知りの狭間で沈黙を選んできた
押し殺した行為の裏で肥大する想像 眠れる才能をイメージの中でもて遊び



現実とは儚いと寂しさをごまかすように帰宅の途に着く