しなるサンドバッグ
うっすらと遠のく自意識
息遣いは忙しなくクレッシェンド
煌々と 蛍光灯が燃える 小さなビルの三階

チャンピオンは出ていない
名の知れたプロも出ていない
それでも熱は
この街の片隅で闇を切り裂いていく

シュッシュッ フッ
シュッシュッ スッ
 未来でも過去でもない
 この"今"だけを抉るアッパー

シュッシュッ ブゥン
シュッシュッ グゥン
 経済でも政治でもない
 この"今"だけを抜くストレート

滴る汗
静かに受け止める靴紐
じっとりと重力を増すことで
軽快なステップを目覚めさせてゆく

連打の果てに浮かび上がる
    愛のように眩しい
    影のように狂おしい

何かが欲しいというよりも
何も欲しくなかったからこそ
自覚できた欲望のままに

誰かを守りたいというよりも
誰かを負かしたいというよりも
誰も振り向いてくれなかったからこそ
自覚できた空虚のもとで

くり出すパンチ
吸い込まれぬように
延々と続きそうなこの日常に向けて

今夜もその一撃を夢見てる
たしかなその一撃を求めてる
この街の片隅で
  小さな、小さな、小さなビルの三階で
 
 

 

この詩は
電子詩集「 ポエトリー ・ パレード 」に収録されています。
 
 
【 無料版 】は7篇収録  価格0円

【 完全版 】は23篇収録 価格100円 → 0円
(  2019年2月2日から無料公開スタート  )

 
両版ともに、1~7篇目までは同じ内容です。