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   パラノイア・セッション
 
 
 
ずっと
近づけば近づくほど
絡まって
離れれば離れるほど
解けてゆく
そう、信じていた
 
 
それが突然、真逆へと雪崩れこむ
近づけば近づくほど
解けて
離れれば離れるほど
絡まってゆく
 
 
深い窓を見つめながら
ネオンの背中を撫で
懐かしい あたらしい 自分と出逢い
細い夜を越えながら
涅槃の吐息を重ね
知らなかった 知っていた あなたと出逢う
 
 
幸せとは何かと
考えられる幸せに包まれたまま
この時の代償を
今日も世界のどこかで
誰かが 何かが 被っていること
忘れそうになる
 
 
ベールを脱いだ
青白い空をキャンバスに
「恋とは、かくも不思議なものですね」と
わかったような
茶化したような口で幕を引く
嫌味のない笑みを添えて
 
その場面を
その日々を
今でも、忘れられずにいる
  
 

 ( 第45回 多治見市文芸祭 詩部門 奨励賞 )