橙に包まれた浅い青

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タグ:羽島市文芸祭


「帰りたい。
 もう一度帰りたい」
顔を合わせるたび 口に出る台詞

帰れない
当分、帰れない
下手すれば 一生、帰れない

わかっているから
なんとなくでもわかっているから
口にせずにはいられない
「帰りたい」とくり返さずにはいられない

幼くても
周りの大人やら
テレビのニュースやら
学校での噂やらなんやらから
敏感に 嗅ぎ取っているのだろう

どれだけ除いても
どれだけ洗っても
あの頃の風景は帰ってこないと
あの頃の世界にはもう帰れないと

自然と
口癖になったのではなく
自覚的に 口癖にしたのだろう

帰れないとしても
「帰りたい」という想いを失わぬように
そう想う今を
決して、決して忘れてしまわぬように

彼女は
「帰りたい」を
口癖にしようと 決めたのだろう



                ( 第39回 羽島市文芸祭 現代詩 佳作 )



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   知らずに済んだフクシマ
 
 
 
ミリシーベルト、ミリシーベルト、ミリシ・・・
一生、知るはずのなかった言葉
ベクレル、ベクレル、ベクレル、ベクレル・・・
一生、知らずに済んだはずの言葉
一大キャンペーンのように
バラ撒かれた
バラ撒かれた
津々浦々にバラ撒かれた
 
 
無知は黙認に等しく
無関心と何ら変わりないこと
痛切に実感した
福島がフクシマになってしまってようやく
 
 
数値に求められ
毒気を抜かれたリスクとコスト
一つの天秤に乗せられ
維持を前提とし
見え透いた古典原能を誇大踏襲
 
 
「今、福島原発はどうなってるの?」
夕方のニュースを見ながら
上の空で答えながら、ふと気づく
「よくわからない・・・」
いつの間にか
あんなに溢れていた関心が薄れている
あれから
まだ5ヶ月しか経っていない蝉時雨



        ( 第38回 羽島市文芸祭 現代詩 入選 )



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